第32章 大切な人
手が震えてた。
でも、そのたびに
雅紀の笑顔を思い出して…
持ってた鞄を握りしめた。
『大輝くん』
「うん…」
『大輝くん…あのね?』
「うん…」
大輝くんは頼んだアイスコーヒーを
一口飲んであたしの顔を見た。
『あたし康介のことはもう
何にも思ってないよ?』
「うん」
『だから言いたかったの。
あなたを傷つけててごめんなさい。
あたしを好きになってくれて…
ありがとう。』
「じゃあ…フッて?」
そう言われたとき、
何回目かと思わせるように
鞄を握りしめた。
きっと、これが傷つけない方法
決着をつけるということ。