第21章 大輝くんの登場
大輝くんの“ヒマだし”という
のは“行きたい”であって、
やっぱり何も変わってない。
スタジオに戻る途中に
あの頃を思い出す。
今、19歳の大輝くんが
まだ15歳で…
あたしが23歳の大学生のころ。
三浦家とあたしの家は
昔から仲良しで、
あ…三浦っていうのは大輝くんの名字。
あたしはその頃2時間もかかる
映像系の大学で勉強をしてて、
大輝くんはあたしの母校に合格したころ。
「ヒマだし」
と今と変わらない一言で徹夜してる
あたしに夜食を持ってきてくれたり、
冷たそうだけど優しい男の子で…
やっぱり女子からはモテたらしい。
運動神経も抜群で、
頭もよくて、
イケメンで…
お兄ちゃんもそうだったな…。
「お!!
早く手伝え!」
稲葉さんの一言に目が覚めて
あたしは再び走り出した。
だめ。思い出さない。