第6章 喧嘩
『牛鍋4人前ですね』
「あと、豆茶(コーヒー)も!」
『はい』
ワイワイ
ガヤガヤ、といつものように賑やかな赤べこ
毎日充実した日々を過ごしている
お昼頃になると、薫さんたちがやってきた
「真愛が働いているところ初めて見たかも」
『……あんまりみないで』
知っている人に仕事風景見られるのって恥ずかしいよね
私は3人を空いている席に案内する
向かいの席は少し騒がしい人たちが居座っていた
自由民権がどうのこうのと、話している
私は歴史が苦手っだから、ちょっとこの手の話は聞き流し
『……少しうるさいけど、気にしないで。えっと、とりあえず、3人前でいいのかな?』
「あと、豆茶3つお願いしてもいい?」
『うん』
私はこくりとうなづき、具材を彼らの席に持っていく
すると何が起きたかはわからないが、
薫さんたちの席と自由民権の席が何か言い争いをしていた
『あ、あの!他のお客様のご迷惑になりますので……』
「黙れ!女の分際で貴様も盾つく気か!!!」
頬に鋭い痛みが走った
自分がこの男に殴られたのだと気が付く
そのまま地面に倒れるかと思ったが、誰かが私を受け止めてくれた
「おいおい。自由民権ってのは弱い者のためにあるもんだろ。それを唱える壮士がこんな真似しちゃいけねえな。
それとも何だ。あんた達の言う自由民権ってえのは、酔いにまかせて暴れる自由のコトかい?」
“大丈夫かい?”とその人は私に言う
私はこくりとうなづき、その人に頭を下げる
そしてそのあと、なぜか細身で長身の若い男性と私を殴った男性が喧嘩することになった
私はというと、店の奥で手当てをしている
ここ最近怪我ばかりしている
一応武道というか、体術とか習っているっていうのに情けない
「はい、これでよし!」
『ありがとうございます、妙さん』
私は、喧嘩の様子が気になり外へ出る
そこには、でこピンで細身の人が相手を倒していた
『……でこピン』
なんていう力の強さ
すると、もう一人の男性が刀を手にしようとしているところを私は見てしまった
それはどう考えても卑怯だ
止めに入ろうかと思った時には、既に緋村さんがそこにいて
男性に何か言っているときだった
そして彼らは去って行った