第8章 まず死体を転がせ(月島蛍)
I’m
y o C a F
r A O
z Y u R
並び替えクイズだと気付くのにそう時間はかからなかった。
そしてそのフレーズが、先ほど鼻で笑ったコラムに登場していたことも。
直感的に口をついて出た答えを、一文字ずつ目で追って確認する。
カチリ、と耳元で音が鳴った。
汗が額を伝う。
時計を見る。考える。
彼女が出てからどのぐらい経った?
頭で考えるより早く、身体は勝手に動いていた。
気付いた時には弾けるように教室を飛び出していた。
階段を駆け下りて、昇降口へ向かう。
荷物を教室に忘れてきたことに気付いた。でもそんなこと今はどうだっていい。
あぁ、悔しい。どうしてこうも必死になっているんだろうか。
自分から告白したわけじゃないのに、どうしてこんなに負けた気分になるのだろうか。
弾む息の中で考えた。
でももうなんだっていい、認めるよ。僕は彼女が好きだ。
追いついて、名前を呼んで、その白い手首を掴んだら、彼女はきっと勝ち誇った顔で笑うんだろう。
そしたらすかさず言ってやるんだ「あんなクサい台詞、僕なら恥ずかしくて死んじゃう」って。
僕となまえは似ている。
強いて違いを挙げるとするなら、
なまえは僕よりも素直で、そして僕よりも一枚上手だ。
僕は彼女には歯が立たない。
END