第45章 11.17 HAPPY BIRTHDAY!!(黒尾鉄朗)
「みょうじ、行き辛いのはわかるけどな?今が絶好のチャンスだろ。行け」
「で、でも、みんなお菓子とかなのに、私のだけラッピングされてるもん。恥ずかしいよ」
ほら、と鞄の中を見せてきた。僅かに開いたファスナーの隙間から、綺麗なブルーの袋とリボンが見えて、あぁ、確かに、と納得してしまう。これじゃあ、黒尾のことが好きですとアピールしているようなもんだ。
「なんでそんな本格的なのにしちゃったんだよ。ちょっと高めのお菓子とかでいいだろ」
「だって、真剣に選べよって言ったの、夜久じゃん」
「言ったよ。言ったけどさ、どういう状況で渡すかも考えて選べよ」
「仰るとおりです……」
うぅ、と項垂れるなまえ。教卓の前の黒尾は、伊達メガネやタスキを男子に奪われながらも未だに浮かれ気分でいるようだ。しょーがねーなぁ、と溜め息を吐いて右手を上げた。
「黒尾!!」
ちょっと来い。目だけでそう伝えると、黒尾は一瞬だけはっとしたような顔をした。でもすぐに「なんですか?」と取り澄ました顔で近づいてくる。何ですか、じゃねぇよ、馬鹿。
「そろそろ貰ったもん全部しまえ。担任来ちゃうぞ」
咄嗟に考えた忠告を伝えると、おーす、と言いながら、黒尾はちらりと隣のなまえの方を見た。そうそう、いい感じいい感じ。
「よお、なまえ」
ずい、と顔を近づける黒尾に、なまえはビクリと肩を弾ませた。
「おっ、おはよっ!」
「今日オレ、誕生日なんだぜー?」
「う、だっ……見ればわかるよ!!」
「なんか俺に渡すもん、あるんじゃねーの??」
口の聞き方に気を付けろ。
心の中で突っ込んだ。意地っ張りななまえのことだ。そんなムカつく言い方されたらーーーー
「あっ、つ、あああるわけないじゃん!」
「…………あっ、ソウデスカ」
ーーーーほら見ろ。言わんこっちゃない。
「誰が鉄朗なんかにあげるか!」と叫んだなまえに、「まぁお前なんかにもらわなくてもー?もう沢山もらっちゃったんでー?」と黒尾も自棄になって煽りだす。馬鹿、と思わず口に出してしまった。なまえにも、黒尾に向けても。