第36章 みんなで共同生活!(烏野1年生ズ)
「ーーーーで?何の映画借りてきたの?」
雨の中コンビニまで日向と影山が走って買いに行ったショートケーキを月島の目の前に置いて、私は彼に尋ねた。まだ少し機嫌が悪いのか、目を合わせずに、コレ、と4枚のディスクを机に広げる。
ふむふむ、と4人でそれに目を通して、あれ、これってもしや……?とほぼ同時に心の中で叫んだ。
全部ホラーじゃん!!!!!
「俺、アクション系がいいって言ったじゃんかよ!」
青ざめる日向に「ゾンビと戦闘する映画」と月島がディスクを渡す。「人の首とか飛ぶから派手で楽しいよ」
「恋愛系は?」
「これ。失恋を苦に自殺した女性が地縛霊になって男に復讐する」
「まさかの和ホラー!!私の苦手なやつ!!」
「つ、ツッキー……感動系は…?」
「あ、山口にはコレね」
そう言ってディスクを摘み上げる彼の口元が、一瞬緩んだのを私は見逃さなかった。
「これ、密室に閉じ込められた人たちが拷問を受けて精神が狂っていく映画なんだけど、最終的に主人公とその彼女だけが生き残ってプロポーズするっていうとこがロマンチックだし、実は部屋に閉じ込められていた人間たちは全員最初から死んでいましたっていうどんでん返しのオチの綺麗さに感動するから、オススメ」
「なんで全部ネタバレしたの!!?」
「王様には、はいコレ。正確には動物じゃないんだけど、きっと気にいると思うよ」
そう言って最後の1枚を喜々として持ち上げた。「トム・シックス監督の『ムカデ人間』」
「おう、さんきゅ」
「影山!!受け取っちゃダメ!それ名前からして下劣なヤツ!!」
っつーかムカデでいいのかよ!?
思わず叫んだけれど、影山はきょとんとした顔で固まっている。
「じゃあみんな、リビングも綺麗にしてくれたことだし、準備はいいよね?」
完全に機嫌を直した、いや、上機嫌になった月島のどす黒い笑顔に、あ、これはヤバいパターンなんじゃない?なんて背筋が凍る。
「せっかくの日曜日だし、まだお昼前だし、時間はたっぷりあるんだからさ」
そして私は、次の言葉に絶望しました。
「順番に全部、観ていこっか。はい、みんなソファに座って」
その日の夜、5人揃って私の部屋で眠ったことは、学校の皆には内緒にしておいてください。
END