第28章 星は燃えているか(東峰旭)
体育館へ来たものの、練習中に入るのもなんだか気が引けた。
今更なんて言えばいいんだろう。謝っても、みんなの視線に耐えられるだろうか。
どうしようかと困っていたところに「あっ、旭さんだ!」という声がした。
「あさひさーん!」
「げっ」
あの日向とかいう1年生だ。窓に掛かった格子に捕まってこちらを見ている。
「なんだ遅刻か!?なめてんのか!?」
開いた扉から怒鳴り声が飛んできた。「ポジションどこだ!?」
「うぃ、うぃんぐすぱいかー……」
「人足んねぇんだ。さっさと入ってアップ取れ!すぐすぐ!」
そう怒鳴ってその人は引っ込んでしまった。
一瞬しか見えなかったが、あれは坂ノ下商店の人じゃないか?なんでここに?
「旭さん!」
混乱している俺を、日向が呼んだ。
希望に満ちたその瞳に、自分の身体が強張る。
……俺は、戻ってもいいのか?
前と同じように動けるだろうか。
ざわざわと草木が揺れた。
『心が止められないなら、足も止めちゃいけない』
風の音に混じって、なまえの声が聞こえた気がした。
『東峰くん、あなたはバレーボールが好き?』
ピアノを弾く彼女の姿が浮かんだ。
「………好き、だよ」
呟いたら、足が動いた。
今まであんなに重かったのに、すんなりと部室へ足が動いた。
東の空に微かに朧月が光っている。
明日彼女に会って、お礼を言わなければ。そう思った。
星は燃えているか END
*後日続編を書く予定です。いつになるかは未定です*