第18章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)プロローグ
“遊園地に行きたい”
ある日の部活終了後、なまえの放ったその一言は本人が思っていた以上の影響力を発揮した。
あれよあれよという間に人数が集まり、日程が決まり、提案者がぼんやりとしている間に詳細が全て決定した。
そして伝えられた通りの日時に集合場所へ行くと、私服姿のみんながずらりと待機していたので、思わず笑ってしまった。
あまりに簡単にことが運んだので、内心、こいつらちょろいな、と思ったくらいである。
みんなにちやほやされるがままに入場券を買い、ゲートをくぐると、そこはもう非現実の世界。
笑顔と音楽の溢れる空間に、なまえもテンションが一気にあがった。
「なまえさん、あれ乗りましょうよ!」
早速西谷が右腕に絡みついてくる。身体が右に傾くと同時に、左腕も引かれる。
「なまえ、写真、写真撮ろ」
菅原である。キラキラした笑顔を崩さずに、きぐるみのほうを指さしている。
む?と両側の2人が目を合わせた直後、肩に衝撃が走った。
「なまえせぇーんぱい!!あれ、なんすか?」
何が起こったかわからないが、日向であることは声で分かった。前によろめいた身体を、西谷と菅原に支えられる。
「日向、落ち着けぼげ」
「あれ?そう言う王様もなーんか挙動不審だよね。なまえ先輩を独り占めしたくてうずうずしてんの?」
「な゛っ……んなわけねぇだろ!!ぼげ月島ぼげ!!!」
「わああー!ツッキー!大丈夫!?」
「山口うるさい」
「なまえさーん!この田中龍之介が!貴女を!!エスコートしますよ!」
「ちょっと待て龍!抜け駆けはなしって昨日言っただろ!なまえさん、田中なんかより俺と回りましょう!
って力が言ってます!」
「俺!?言ってないよ!」
なまえ、なまえさん、なまえ先輩、と次々に手を引かれて、そしてその度に随所で小競り合いが起きる。
まさに阿鼻叫喚である。
なんで今日に限って潔子も谷地ちゃんも来ないのよー!2人揃って用事とか信じられない!!
なまえはわちゃわちゃされながら嘆いた。
「はいはい、お前ら静かに」
大地が両手を叩いた。一気にみんなの動きが止まる。