第11章 今でもわからない
「帰ろうか」
無言でうなずく。
拓斗さんは止めてくれない。
「行くな」って言ってくれない。
ここもやめるんだ…。
「お世話になりました…」
動物園の門を出る。
私も陸さんも黙ったまま。
駐車場に着く。
陸さんの車はスポーツカー。
高そう…。
荷物を乗せて助手席に乗り込む。
「……」
「…」
沈黙が続く。
陸さんはエンジンをつけない。
ずっとハンドルに両手を置いて
ボーっとしている。
「果奈ちゃん」
「ふっふぇっ?!」
突然話しかけられたものだから
ビックリして変な返事になってしまった。
「ふっやっぱ、果奈ちゃんかわいいな」
「///わ、笑わないで下さいよっ!」
「笑ってないよ」
陸さんが寂しい笑顔になる。
「…」
「果奈ちゃん、動物園戻りな」
「…えっ?」
「果奈ちゃんの彼氏になるのは
俺じゃない。拓斗だよ。」
「そんなこと」
「あるよ。だって果奈ちゃん、まだ
拓斗のこと好きじゃん」
「へ…?」
「拓斗、果奈ちゃんのこと好きだよ。
親友が言うんだから間違いない。」
「……」
「ほら、行きな」
「っっ」
「俺の事は気にしないで。
この世には女の子たくさんいるから笑」
「ーーっごめんなさいっ」
私は車から飛び降りる。
荷物も忘れて動物園へ向かって走る。
走るのは得意ではない。
でも走る。
「女の子はたくさんいるけど
果奈ちゃんみたいな子はなかなかいないな。
まじで好きだったのにな」
陸さんのわざとらしい大声の呟きも
方耳で聞きながら走った。
どこにいるの?
動物園のどこ?
事務室?
飼育委員室?
わからない。
でもきっとあそこ。
いつも私の事を見守ってくれていた
あの飼育委員室。