第11章 蓑虫・ナイトメア=ゴッドシャルク
ハートの国に留まることを決意した矢先に起きた「引っ越し」
歯車が回るように土地が変化する
その引っ越しに弾かれた余所者のアリスは、ここ「クローバーの国」へ来てしまった
ハートの国にいた時からアリスを見守ってくれた夢魔、ナイトメア
見知った彼のいるクローバーの塔にアリスはお世話になっている
(いえ、ナイトメアのお世話をしている…と言った方が正しいわね…)
さんざん駄々を言っていたナイトメアも、アリスが薬を混ぜたホットミルクを飲んで今はすやすやと寝ている
幼い子供のような寝顔のナイトメアを見ながら、アリスはズレた布団を掛け直した
ハートの国では夢の中でしか会えなかった彼が、目の前にいる
最初こそ慣れなかったが、今では会えなくなると不安になる
また、一人になりそうで…
「…なんだかんだ、ナイトメアは親切で優しいのよね…」
ぽつりと漏れた自分の声音にびっくりする
(私、こんな甘い声してた!?よりによってナイトメアに!)
…ボンっと顔が熱くなるのを感じ、足早に…でも静かにナイトメアの部屋を出た
彼女の足音が遠ざかる気配を感じたナイトメアはゆっくりと瞼を開く
「…少しは、私を意識してくれ…。私はずっと君のことが…」
掠れた声はふわり漂う空気に溶けて霧散した