第11章 蓑虫・ナイトメア=ゴッドシャルク
*クローバーの塔・領主室*
「げほっ…がはっ、ぶふぉッ」
「…大丈夫?ナイトメア…」
半ば呆れた顔で、アリスは彼の背中をさする
色素の薄い髪に、白すぎる肌
病弱そのものをそのまま絵にしたような、クローバーの塔の領主…
ナイトメア=ゴッドシャルク
名前は凄く偉そうなのに、当の本人はというと…
病院嫌い
注射はもっと嫌い
点滴も絶対しない
入院なんてもってのほか
病人のくせにコーヒー(ブラック)を飲み、煙管を好むどうしようもない奴
(ちゃんと治せばいいのに…)
「ぐっ…、嫌いなものは嫌いなんだ…!!」
「そんなこと言わず、注射でも打ってすぐに治せばいいじゃない…」
「注射、だと…!?あの金属の細い針が皮膚を突き破り、血管に入り、得体の知れない液体を入れる、あれをしろと言うのか!?無理だ!私には絶対に無理だ!!」
「……そんなに生々しく言わないでよ…」
白い顔をますます青白くしながら涙目で力説するナイトメアの背中をさすりながら、アリスは何度目かもわからない溜め息を零した
「…それに、治ってしまったら、こうして君に看病してもらえなくなるだろう…」
「何か言った?」
「い、いや!何でもない!何でもないぞ!」
今度は少し頬が赤くなったナイトメアを見て、アリスは首を傾げるのだった