第9章 血まみれの双子・トゥイードル=ディー&ダム
なおも向かって行こうとする双子の手を咄嗟に掴んで引き寄せ、アリスはぎゅっと抱き締めた
「お、お姉さん?」
「お姉さん、どうしたの?」
(……だめ。行かないで…)
自然と双子を抱き締める腕に力が入り、アリスは静かに涙を零した
オロオロする双子を見つめていたエースは、面白くなさそうに剣を収める
「…アリスに免じてこのくらいにしておいてあげるよ。次は本気の殺し合いをしような!」
そう言って、死んでいる約無しには目もくれずにエースは立ち去った
*帽子屋屋敷・アリスの部屋*
ディーとダムに支えられて自室へと戻ったアリス
震える彼女を見た双子は困ったように顔を見合わせた
「お姉さん、大丈夫?」
「何か温かい飲み物持って来ようか?お姉さんのお願いならタダで働くよ?」
アリスはただ首を横に小さく振って、双子の手を離さない
「…………………いで」
「えっ…?」
「なぁに、お姉さん…?」
「…行かないで…ッ。あなたたちが…ッ、どんな形であれいなくなったら…私ッ…!!」
(…大切なのよ、あなたたちが…。私にとってとても…)
大粒の涙を流すアリスの両頬に温かな感触
ディーとダムの、ままごとのような軽い…優しいキス
「大丈夫だよ?お姉さん…。僕たちお姉さんのこと大好きだから、絶対にいなくなったりしない」
「そうだよ?あの迷子にだって負けないし、面倒な仕事だってお姉さんがいるから頑張れるんだよ?」
「僕らは、絶対にお姉さんを裏切ったりしない。だって、お姉さんのこと本当に大好きなんだもん!」
「僕も好き!僕も好き!お姉さん、大好き!」
子供らしく、飾らない言葉
ストレートな表現
弾けるような優しい笑顔
アリスの不安をゆっくりと溶かし、温かな気持ちが広がっていく