第8章 三月ウサギ・エリオット=マーチ
「良かったな、エリオット。オレンジ色のものは全てお前にやる。アリスが作ったんだ、味わって食え」
ブラッドは紅茶に口を付け、アリスのスコーンを少しずつ食べる
その様は、さながら一つの絵画のようだ
「ブラッド、アリス…俺のために…!二人とも、大好きだッ!!」
「ブッ!!」
「ゲホッ!!」
キラキラオーラを放つエリオット
「? どうしたんだ?大丈夫か?」
紅茶が気管に入ったり、スコーンを喉に詰まらせたり…
散々で大変なお茶会になった
*帽子屋屋敷・エリオットの部屋*
「なぁ、アリス。また作ってくれよ!」
「ええ、そのうち…ね」
二人でベッドに腰掛けながらお喋りをする
この時間がアリスは好きだった
「そっか!ありがとな、アリス!大好きだ!!」
「………ッ!!」
(エリオットは真っ直ぐストレートに感情をぶつけてくるから、反応に困るわ…)
「どうしたんだ?顔赤いぞ?」
「気のせいよ…」
「…俺、アンタが好きなんだぜ?」
さっきとは変わった声色と『好き』という響き
そして、エリオットの切なげだけど真剣な表情
「…私、は…」
「…アリス、好きだ」
そっと頬に触れられると、どくんと心臓が跳ねる
ドキドキして、恥ずかしくて、少し苦しい、だけど心地よい痛み
これは一度だけ経験したことのある気持ち