第5章 トカゲ・グレイ=リングマーク
「まずは、野菜を洗って切っちゃいましょう!」
そう言って、手際よく作業を進めるアリスをグレイは関心したように見つめる
「随分手際がいいな。慣れているのか?」
「えぇ、だいたいは。グレイだって刃物の扱いならさすがね」
滑らかな動きで野菜の皮を剥く彼の手先に見惚れる
グレイは元暗殺者で、ターゲットはなんとナイトメアだった
が、病人を殺すのは後味が悪いし張り合いがない等の理由であれこれ世話を焼くうちに、今のポジションに収まった
彼の得意な武器は投げナイフ
グレイのコートの中にはたくさんの暗器が仕込まれている
ナイトメアの優秀なボディーガードだ
「そうやって褒められたことはないが…。ありがとうな」
グレイの優しい笑顔を向けられたアリスは、ときめいて手元が狂い思わず指を切ってしまった
「痛っ…」
「大丈夫か!?…少し深めに切れたみたいだな…」
グレイに触れられた手が緊張で震える
「少しだけ我慢してくれ」
そう言うと、グレイはアリスの血が流れる指を口に含んだ
「ぐ、グレイッ!?」
真っ赤になって固まるアリスを見て、はっとした彼は急いで彼女の指を流水で洗った
「す…、すまない。咄嗟の行動だったとはいえ、軽率すぎたな…」
「大丈夫…、びっくりしたけど…。グレイだったから、嫌じゃなかったわ…。むしろ…」