第4章 白ウサギ・ペーター=ホワイト
*ハートの城*
「アリスアリスアリス!」
「………」
「アリスアリスアリスアリスアリス!」
「……………」
「聞こえないんですか?では、もっと大きな声なら聞こえますね!アリ…」
「うるさいッ!!」
――ばきっ!!
「あぁッ!!」
思いっきり右手を握りしめ、遠心力を使い振り抜くと…
彼…、ペーターは吹っ飛んだ
(何なのよもう!)
「痛いです!痛いですよアリス!」
「痛くしたの!私の仕事の邪魔しないでちょうだい!」
アリスはハートの城でメイド見習いをしている
仕事がしたくてお願いしたのだが、これが意外とやりがいがあって楽しいのだ
…が、いつもいつもいつもいつもペーターにひっつかれて一向に進まない
今もそうだ
庭でビバルディの好きな赤薔薇の垣根の手入れを同僚のメイド数人としていたのだが、どこからともなくやって来て…アリスに吹っ飛ばされた
「…ふふ…、そうですか。僕の理解が足りませんでしたね…。これは、愛の痛み!狂おしいほどの愛はこれほどまで痛いんですね!あぁ…、アリス!これがあなたの愛情表現なら喜んで…」
「気色悪い!!」
――べきっ
「はぅあッ!!」
(全く…。いい加減にして欲しいわ!)
後ろから同僚たちの視線がアリスに注がれているのを感じ、なるべく笑顔で振り向いた
「さ、あんなヤツ放っておいて私たちは早く終わらせちゃいましょう!」
「でも、ホワイト卿は…」
「いいのよ!早くしないとビバルディのイライラがピークに達しちゃうわ!夕方が全然来ないから、そろそろ庭に来るはずだし!」
しぶしぶ了承したメイドたちと一緒に、アリスは仕事を再開した