第3章 チェシャ猫・ボリス=エレイ
歩けど歩けど、薄暗がりの道
ボリスは「チェシャ猫だから夜目は利くんだ」と得意げに言い、ずんずんと進んでいく
アリスは次第に恐怖心も薄れ、ボリスと雑談できるまでになった
「だよなぁ!おっさんのバイオリンに秘密がないなら、あの凶器的な音楽はおっさんが原因だよな!」
「本当よ!毎回毎回被害に遭うこっちの身にもなって欲しいわ!」
「おっさんはあれで音楽家気取ってるか…」
ピタリと足を止め、ボリスは辺りを見回す
その顔はキリッと引き締まり、アリスは思わず見惚れてしまう
「何か聞こえないか…」
「何かって…」
――ゴゴゴゴ…
「だんだん大きくなってる…」
「えッ!!どうしたら…ッ」
2人が歩いて来た後ろを見ると、地鳴りと共に巨大な鉄球がこちらへ向かって転がって来た
更に運悪く、ここは一本道で逃げられる脇道がない
「走るぞ!」
ボリスの声に弾かれるように2人は走り出した