第1章 ハートの騎士・エース
――ざざざざざざ…
(どうしてッ!!いつもいつもいつもいつも…ッ)
「あはははは!アリス、旅って楽しいよな!」
「何のどこが楽しいのよ!ちっとも楽しくないわッ!!」
「楽しいじゃないか!熊と追いかけっこなんて、滅多に出来ないぜ?」
「出来なくていい!!」
(さ…酸素が欲しい…ッ)
*数時間帯前・ハートの城*
「おーい、アリス!」
「エース?」
青空に赤…。やはり目に痛い組み合わせだ…。
「相変わらず寒いくらいの胡散臭い笑顔ね…」
「ひっどいなぁ、顔を見るなりそれはないぜ」
ははは、と笑う赤い男。
ハートの騎士、エース
真っ赤なコートに身を包み、長剣を腰に挿した彼はハートの城の役持ちで、その剣の腕は確かだ。
「…あなた、また迷子なの?」
「またとは何だよ。俺は迷子じゃない!ちょっと道が分からなくなって、近道をしていたら結果ますます道が分からなくなるだけさ!」
「それを迷子と言わなくて何て言うのよ」
「まあまあ、いいじゃないか!」
(ちっともよくない)
基本、この世界の住人は人の話を聞かない
アリスはこめかみに手を当て、小さく溜め息をつく