第10章 月のない夜
「テツ君っ、サラダだけでも食べない? 実は私が作ったんだよ!」
「……お皿に盛りつけただけだけどね」
「有栖ちゃん酷いっ!」
「すみません。お気持ちだけ……で。折角のものを、吐いてしまうのは失礼なので」
そう言って黒子は冗談抜きでしんどいらしく、机に突っ伏した。ここで一人部屋に戻らない辺りが偉いなぁと思うのは私だけかな?
「黒子、そんなようではこの後の肝試しで体力が持たないぞ」
「えっ……征十郎、もしかして肝試しほんとにやるの?」
「なんだ、お前怖いのか?」
綺麗な征十郎の笑顔が映り込む。私も真似するかのように、そして誤魔化すように笑顔で返した。
「何のことかな?」
「有栖っち、怖いの苦手なんスか?」
「苦手っていうか……別に」
目を逸らせば、青峰が面白そうにこちらへにやにやしながらやってくる。
「そうかそうか、お前怖いの苦手なのか! 絶対参加しろよ」
「煩いなぁ! どっちでもいいでしょ」
「お前の怖がってる姿とか面白れぇじゃん? 盛大に笑ってやるよ」
「黙ってよ黒焦げ」
「誰が黒焦げだ! 焦げてねぇよ!!」
「問題はそこじゃないと思うのだよ」
緑間君のツッコミを聞きながら、征十郎が「お前達、もっと落ち着いて食べれないのか」と正論を投げかけてきたので、一気に場は静まり返ったのは言うまでもない。