第3章 夕陽が沈む頃
「ねぇねぇ、緑間君ってさ……映画とか見る?」
「映画? そうだな……本は読む、が……映画はあまり見ない」
「そっか。ちょっと残念」
「南雲は見るのか?」
「洋画のグロホラーしか見ませんけど」
「そういうのはホラーではなく、スプラッターというのだよ」
その通り、と思いながらも私達の手元が止まることはない。
「南雲はもう少し、本ばかり読むのをやめるといいのだよ」
「……なんでだい?」
「俺が言うことではないが、部活に入ったり、今しか出来ないことをする方が、よっぽど価値があるのだよ」
「お、緑間君言うね。でも私部活とか、あんまり興味ないんだよねぇ。文系の部活はあくび出そうだし、運動系はな……運動苦手だし」
「駄目ではないか、まったく」
「あははっ」
よし、今日の授業の復習分は終えたかもしれない。緑間君の方へ視線を向ければ、真剣に教科書を見ながら、ノートに問題の答えを書いていく。
シャーペンが紙をこする音、かりかりと無機質な音と、本を捲る音だけが室内を満たす。窓から差し込む夕陽がとても綺麗だった。あれ? いつの間にか雨が止んでいる。
「夕方からは、晴れなのだよ」
「あ、そうなの? よく知ってるね」
「おは朝占いで、おまけに天気予報をやっていたのだよ」
「……へぇ」
そういえば、いつもわけのわからない小物を持ち歩いている彼。聞けばおは朝占いのラッキーアイテムなんだとか。いるんだね、今時占いを信じてラッキーアイテムをしっかり持ち歩いている人。
その辺にいる女子よりも、たぶん女子らしい。そういうところは。
因みに私は、占いをまったく信じていない。