第10章 大好きだよ
「ウィスキーですね。」
「ダブルでお願いね。」
女の前にウィスキーが置かれた。
女はウィスキーを一気に飲み干すと言った。
「勘定、置いておくわよ。」
すると女はフラフラとした足取りで、公衆電話の受話器を取った。
「そうよ、私よ。仰せの通り今から出発するとこ、麗しのフランチェスカへね。厄介払いができて、さぞホッとしてるんでしょ?あの娘とせいぜい幸せに暮らしてね。酔ってなんかないわ、少しお酒を飲みましたけどね。全然酔ってなんかないわよ、酔えるもんですか…。結婚しようって言ったのあんたじゃない、何よ…嘘ばっか言って…っひっく…行きたくないわよ、あんなとこに…フランチェスカなんて…フランチェスカなんて最低のコロニーじゃない!今度の女もすぐバレる嘘ついて、たらしこんだんでしょ?私の時と同じ嘘を言い通す根性もないくせに!」
そう言うと女は電話を切り、泣きながら立ち去った。