第8章 幕間
「……………」
薄暗い部屋の中、部屋に電話をする声が反響する。
上物のスーツを身に纏い、机には山積みの書類が置かれている。広い部屋のデスクに腰を構えるその姿は、なかなかの貫禄である。
「様子は……。 ………そうか、この調子だと……… ………? ………順調に行けば…………」
スーツの男は片手間に会話をしながら秘書の女を呼び寄せる。手帳に『顧客の情報』と書いた紙を見せると、秘書はすぐさま一枚のメモを取り出して、彼に見せた。
「…………初仕事は……………日だ。それまでに………仕上げて………躾を…………。 ……………ああ、………。
家族に動きは………………まあ、そうだろう……… そういうのを選んだからな……………」
秘書は電話をする男をちらりと見やり、気付かれないよう小さく息を吐いた。何年かこの男に仕えているが、聞こえてくる会話はそう気持ちの良いものではない。
「………ああ、頼んだぞ………」
そう言って電話を切ったスーツの男は、秘書にじろりと目線を遣った。秘書の女はびくりと肩をすくませる。
「…仕置が必要らしいな」
「…別段そのようなことをした覚えはございませんが」
「私に口答えをするのか」
「いいえ、決して…」
はたと口元をおさえる。
「バレていないとでも思ったのか?」
「!」
スーツの男はふっと口の端に笑みを浮かべ秘書の女の腰を引き寄せると、押し倒して強引に唇を奪った。