第1章 誘拐・拉致
優香が目を覚ましたのは、知らないベッドの上だった。
「う・・・」
いつもと違う天井。いつもと違う部屋。いつもと違う家具。
頭が痛くて目の前がくらくらする。
ここはどこだ。 なんであたしこんなとこにいるの。誰が連れて来たの。
確か今日、学校へは行ったはずだった。
高校の帰り道、友達と別れた直後だ。
優香の家は学校からそれなりに遠く、自宅に一番近いところにあるバス停は人気が少ない。
この日は部活で帰りが遅くなっていた。日の落ちた道を歩いていると前から黒い車が来るのが見えた。その車が路肩に止まったかと思うと同時に、スーツの男達が降りて来た。何事かと警戒しているとこちらに近寄りハンカチらしきものを口に当てられたのだった。
あたし家に帰れるのかな、とこの時はそんなことしか思いつかなかった。