過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第80章 すれ違い
馬車の中でナナシはエルヴィンのハンカチを握り締めながら、
先程のエルヴィンの様子を思い出していた。
エルヴィンは明らかに怒っていた。
確かに問題を起こすなと言われていたが、
まさかあそこまで酷い惨状になるとは思わなかったし、
あの姉妹に言った事に後悔もない。
エルヴィンの信念を軽んじられたのが我慢ならず、
ついキツイ事を言ってしまったのは良くなかったかもしれないが、
自分が間違った事を言ったとは思っていない。
・・・・だが、
「・・・今視界にすら入らないのは私の方か」
カレンに言った言葉が、そのまま自分に返ってきたように感じ、
自嘲気味に笑う。
この婚約者ごっこを早く辞めて、
エルヴィンには良いお嫁さんを見つけて貰わなければ、と思った。
ちゃんと後ろ盾があって、エルヴィンの信念を理解して
支えてくれる女性がいれば良いのだが・・・。
ピクシスに相談すれば良い娘を斡旋してくれるだろうか?
あの男は顔が広いし、そういう世話が好きだから頼めば
喜んでやってくれそうである。