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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第78章 王都出張







「自分でもこれを持っているのが意外なんだ。
・・・・でも、今の私にとってこれはとても大事な思い出の品だから、
つい持って来てしまった」

「わかります。自分もつい持って来てしまうものがあるんですよ」


そう言うとモブリットは自分の荷物を漁って、
いくつかのお守り袋をナナシに見せてくれた。


「初めての壁外調査前に仲間と一緒に買ったものなんです。
・・・残念ながら、その仲間は皆亡くなってしまいましたが、
運良くお守り袋は回収出来て、彼らの遺志をこれに見立てて
肌身離さず持つようにしているんです」


モブリットの真っ直ぐな性格が伝わってきて、
ナナシは彼が眩しく見えた。


「お主は強いな・・・モブリット」

「いえ、自分は全然強くありませんよ。これが無いと
自分の意志が揺らいでしまいそうで恐いだけです」

「強いさ。死んだ仲間を背負うのは並大抵の覚悟で出来るものではない。
・・・現に、私は背負いきれず捨ててしまった」

「ナナシさん・・・・?」


死んだ仲間の服の一部すら持って帰れず、
今もこうしてのうのうと生きてしまっている。

それに比べればモブリットは遥かに強い。


「私も・・・もう少し強ければ良かったのに・・・・」


誰にも愚痴らないようにしていたのに弱音を吐いてしまい
少し後悔したが、モブリットは何も追及せず
「もう寝ましょうか」と言ってくれたので、
ナナシはそれに少し安堵した。

モブリットは気遣いに長けているので、
根掘り葉掘り聞いてこないのが良い。


「おやすみ、モブリット」

「おやすみなさい、ナナシさん」


就寝の挨拶をした後、ナナシはぬいぐるみを抱いて布団に潜った。





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