過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第78章 王都出張
―――三日後、ナナシは居心地の悪い馬車の中に押し込められていた。
馬車の中には、書類を確認するエルヴィンと、
彼を補佐するような役割を果たす女性兵士一人と、
護衛であるリヴァイとナナシが座っていた。
ナナシとリヴァイは終始黙ったままだったが、
エルヴィンと補佐官は会議の為の打ち合わせなのか
色々と言葉を交わしている。
それだけならまだ良かったのだが、
この女性補佐官はどうやらエルヴィンに惚れているらしく、
隙あらば秋波を送っていて、それがナナシの神経を
苛立たせるくらい過剰なものだった。
エルヴィンはそんな彼女の色目など気づかない振りをして
やり過ごしているし、リヴァイもなるべくそれを見ないように
窓の外へと視線を投げているので、ナナシが何か言及するのも筋違いだ。
仕方なくリヴァイと同様、窓の外へ視線をやり
エルヴィンと女性兵士を意識下から外すように努力する。
・・・こんな乱れた精神状態で、
自分はきちんと仕事をこなせるだろうか?
そんな不安を抱えたまま、馬車は王都に辿り着いた。