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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第77章 それぞれの想い










「君に関係無くとも、私には関係がある。
お陰で私は君を待たなければならないという無駄な時間を過ごした。
それについての謝罪くらいあって良いようなものだが?」

「・・・・何か用があったのなら明日でも・・・」

「急用で君の帰宅を待っていたと察して貰えないとは、
君は随分と独り善がりになったね」

「・・・・・・・・・」


自分が望んだ事とはいえ、エルヴィンの冷たい言葉が心に突き刺さった。


「まぁ、良い。用件を言おう。三日後、
シーナへ一週間の出張が入った。君もそれに同行しろ」

「え・・・・だが、他の兵士が・・・」

「一週間の予定の中には夜会も含まれている。
昼間は護衛、夜は『ナナリー』という婚約者を演じ、
私の傍で侍るのが君の仕事だ。先方が
『調査兵団団長の婚約者』を見たいそうでね。
君に拒否権は無い」

「・・・・・・・・・・・わかった」


もうこれ以上押し問答したくなくて、ナナシが素直に了承すると、
エルヴィンは「あと一つ」と付け加える。


「私と君は雇い主と雇われた者だ。これからは私を
『スミス団長』と呼び、敬語で話すように」

「―――――っ!!??」

「以上だ。失礼する」


呆然と固まるナナシを置いて、エルヴィンは去って行った。

とうとうエルヴィンから私情を挟まない線引きをされたナナシは、
エルヴィンから離れるという計画が上手くいっていて
喜ばしい事のはずなのに、何故かショックを受けた。

その場に立ち尽くし、口の中で「スミス団長」と言ってみるが声にならない。


ナナシは一度キュッと唇を引き結んだ後、
「さようなら、エルヴィン」と声に出して、自分の部屋に飛び込んだ。




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