過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第77章 それぞれの想い
ぼんやり待っていると、慌てた様子でナイルが
受付までやってきてナナシを視認すると、
目を大きく見開いた。
ナナシは取り敢えず先日のお詫びをせねばと、頭を下げる。
「突然押しかけて申し訳ありません。先日の懇親会では
多大な迷惑をお掛けしたとかで・・・」
「いや、あんたもう足の怪我は大丈夫なのか?」
「はい、お陰様で完治致しました」
「そうか・・・それなら良かったよ」
ナイルは顔に似合わず気遣いの出来る男で、
受付では何も言わず、ナナシを黙って奥の部屋へ案内してくれた。
案内された部屋は、広くもなく狭くもない応接間で、
ナイルは部下にお茶を持ってこさせると対面に座り、
本題を切り出した。
「それで・・・突然どうしたんだ?あんたがエルヴィンも連れず
一人で来るなんて・・・」
嫌な予感がしながらもナイルは律儀に尋ねる。
「ドークさんにお願いがあって参りました。
・・・出来ればエルヴィンには内緒で」
「・・・お願い?」
「はい。エルヴィンの・・・父親の戸籍が残っていましたら、
見せて頂きたくて・・・」
ナナシの頼み事は、ナイルを黙らせた。