過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第11章 ゴロツキとの再会
誰かに教えを乞うなど久々の事だった。
その事に自尊心が傷つかないという訳ではなかったが、
プライドと仲間の命を天秤に掛けるまでもなく
彼は仲間を選ぶ人間だった。
あの技が使えれば仲間の死亡率を下げられるかもしれない、と。
だが、返ってきた答えは素っ気ないものだった。
「お主には使えん。諦めろ。」
「使えねぇとは習得出来ないって事か?」
「あぁ、無理だ。
いくらお主がスピードファイターでも根本的な力量が違いすぎて
習得不可能だ」
「おまえとは格が違う」と言われたようでリヴァイが舌打ちを返すと、
ナナシはフォローするように言葉を続けた。
「逆に立体機動戦において私はお主には敵わん。
次の行動に移る際、私には必ず迷いが生まれる。
一瞬の判断の差というのは大きいからな」
「・・・そいつを直せば良いだけじゃねぇか。
自分の欠点がわかってんだろ?」
「直せぬ欠点だ」
ナナシの言葉にリヴァイは何と答えれば良いかわからなくなった。
昔からリヴァイはナナシの戦闘能力と冷静な観察力には
一目を置いていた。
だからこそ、ここまで言い切られると「そうなのか?」と
思ってしまうのだ。
「立体機動を始めてどのくらいだ?」
以前会った時、ナナシは立体機動装置など使っていなかった。
だとすると2~3年というところだろう、と
当たりを付けトランクに仕舞われている立体機動装置を見遣る。