過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第11章 ゴロツキとの再会
「どうした、リヴァイ。よくここがわかったな」
「・・・ミケが恐らくここだろうと。
憲兵団から急ぎの仕事が来て、おまえのサインが必要だ。
さぼってないで仕事をしろ」
「成程・・・」
書類の束を持って近づいてきたリヴァイは、
エルヴィンが誰かに伸し掛かっていた事実に眉を寄せ
苦言を呈した。
「てめぇが女を抱こうが知ったこっちゃねぇが、
時と場所を考えやがれ。他人に見られでもしたら・・・・・あ。」
「ん?」
エルヴィンが押し倒していた人物の顔を見た瞬間、
リヴァイは言葉を失い身体を硬直させた。
ナナシもリヴァイの姿を視認するとポカンと口を開いて驚く。
「ナナシ・・・か?」
「リヴァイの小僧か」
同時に発せられた声は静かな森の中に消えていった。
動かなくなった二人を交互に見て、
エルヴィンが怪訝な顔をする。
「二人は知り合いなのか?」
エルヴィンの言葉に我に返ったリヴァイは、
今までにないくらい狼狽しエルヴィンに詰め寄った。
「おいおい、ちょっと待てエルヴィン。
こいつの恐ろしさをわかった上で押し倒していやがったのか?」
「うん?恐ろしさ?」
首を傾げたエルヴィンに対し、リヴァイは絶望に似た表情を向ける。
「知らないでやってやがったのか・・・命知らずめ」
「どういう事だ?リヴァイ」
「どうもこうもこいつは・・・・・」
ヤバイ奴だ、と言い掛けて口を噤んだ。
昔一緒に仕事をした時のナナシの殺しの手口を思い出し、
思わず隠し持っているナイフの所在を確認する。
今の三人の位置と距離を考えると、確実にエルヴィンは瞬殺されるだろう。
それぐらいの早業をナナシは持っている。
それを今エルヴィンに告げるべきかとナナシの様子を窺うが、
彼からはまだ殺意や敵意を感じない。
いや、そんなものを感じた瞬間命を取られているはずだと
リヴァイは冷や汗を流した。