過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第71章 壁の外で何を思う?
エルヴィンはそんな班長達の反応に内心満足しながら、
会議を終わらせ解散させると、ナナシが寝ている隣の部屋へ向かった。
打ち捨てられた古城は、それなりに劣化しているが
雨露を凌ぐには充分な機能が残っている。
ナナシは壊れかけたベッドに布を敷き、丸まりながら眠っていた。
エルヴィンは起こさないようにそっと近づき、
ナナシの寝顔を覗き込む。
口許は毛布で覆われているので見えないが、
エルヴィンが近くにいるのに起きる気配が無い事から
相当疲れて熟睡していることが窺えた。
「ナナシ・・・君はやはり調査兵団にはなくてはならない存在だよ」
聞いていないとわかっていても自然とそう話し掛けてしまう。
無防備な姿が珍しくてナナシの髪を梳くと、彼は「ん・・・」と僅かに声を上げて、また深い眠りに就く。
「・・・・・ここが壁外じゃなかったら、
このまま君を襲っていただろうな」
エルヴィンは目元を和らげてそう呟くと、
自らの身体も休ませるべく近くに布を敷き、
暫しの眠りに就いた。