過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第71章 壁の外で何を思う?
壁外調査当日―――
予定通り荷馬車護衛班として配属されたナナシは、
ミケと協力し取りこぼされた巨人の存在が無いか神経を集中させていた。
正直言うと壁外・・・特に壁近くの壁外はナナシにとって
『迅鬼狼』の仲間が全員死んだ場所で、忌まわしき場所だった。
それがローゼだろうがマリアだろうが関係なく、
トラウマとなっている。
壁外調査前に万が一の事があってはならないと思って、
もしかしたら壁外に出たら恐怖で動けなくなるかもしれない旨を
エルヴィン達に伝えていたが、それも杞憂に終わり
通常通り行動できている。
それよりもそれを報告した時に尋ねられた
ナナシの装備について答えるのが面倒だった。
ナナシが装備しているのは二対の黒い刃のみで、
それは皆が使っている超硬質ブレードでは無い。
刃毀れもしない、伸縮出来る刃にハンジの眼の色が変わった。
自らの影で出来ている刃の材質を説明出来ず口籠っていると
取り上げられそうになったので、必死に自分にしか
扱えないものだと主張した。
これは嘘ではないが、それで納得するエルヴィンとハンジでは無く、
猶も食い下がってきたので仕方なく
口からでまかせを言う羽目になったのだった。