過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第68章 役に立つには・・・
「だが、私に頼られても困る。私は万能ではないし、
ずっと広範囲の気配を探り続けることは不可能だ。
移動中気を張っている代わりに夜間の見張りは出来ない。
休ませてもらう。それに・・・」
何をそんなに釘を刺す必要があるのだろうかと四人は思っていたが、
次に発せられたナナシの言葉を聞いて息を呑んだ。
「・・・・それに、私にばかり頼った戦略に慣れてしまったら、
私がいなくなった時大変だろう?」
四人は時折失念するが、ナナシは半年契約で
調査兵団に雇われているのだ。
壁外で死なない保障は無いが、それでも生きている限り
ずっと一緒にいられる気でいてしまう。
それをたった今全否定され、執務室内に重い空気が漂った。
「お主達が契約違反しない限り、残りの期間は
役に立ってやるから安心しろ」
ナナシだけそう満足そうに言ったが、
エルヴィン達の心中は複雑で・・・
美味しいお茶を飲んでいるはずが味気ないものに感じられたのだった。