過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第65章 男か女か
「人の生理現象にまで立ち入ってくるな。不愉快だ」
「君を不愉快にさせて申し訳なく思うが、此方としても
君が男娼を買いに行こうとしていた事を考えると良い気分ではない」
笑みを引っ込め威圧感の増したエルヴィンにそう言われ、
ナナシは「ん?」と首を傾げて彼の言葉を反芻する。
今・・・男娼って言ったか?
「・・・・・・・確かに娼婦を買いに行こうとはしたが、
何故そこで男娼になるのだ?」
「君が娼婦に何の用事があるというんだ?用事があるのは
男娼の方だろう?」
「私は娼婦に用があったのだ。男なんぞ買ってどうする」
「逆に問おう。娼婦など買ってどうしようと言うんだ?
どうにもならないだろう。ここまできて、嘘を吐く必要は無い」
え?え?意味がわからない。
エルヴィンと会話しているはずなのに、
会話が噛み合っていないのは気のせいだろうか?
そこでナナシは漸く先日の一件で、
エルヴィン達がナナシを女だと思い込んでいる事に気づいた。
まずはその誤解から解かねばならないのだが・・・
果たして納得してくれるだろうか?
「お主達は恐らく勘違いをしていると思うが、私は男だ。
この前は女装していただけで、ちゃんとお主達と同じものが
股の下に付いておるぞ?」
ナナシの言葉に三人は目配せを送った後、
「ハァァァ・・・」と盛大な溜息を吐いて
「だから、そんな嘘を吐く必要は無いんだぞ?」と
呆れたように言った。