過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第65章 男か女か
――数日後
鼻歌を歌いそうなほどエルヴィン・スミスは大変機嫌が良かった。
というのも懇親会での一件で、人質になった娘達の親から
感謝の気持ちとして多額の寄付を貰えたからだ。
エルヴィンの婚約者であるナナリー(と、ペトラとニファ)が、
自分の危険も顧みず人質を救出しようと頑張っていた姿が
捕まっていた娘達の心に残ったらしく、
親に調査兵団への寄付を強く望んだらしい。
その上、酷い怪我を負ってしまったナナリーに心を痛めた他の出席者からも、
お見舞い金や食料、物資などが送られてきたので、
壁外調査が一回出来る程の資金を得ることが出来たのだ。
エルヴィンにとってナナシは幸福の女神だった。
ナナシが来てから色々騒動は起こるが、
結果的に調査兵団の利益になっているのだから何の問題もない。
問題があるとすれば、未だにナナシの弱みや秘密を掴めていないので、
いつ彼が出て行ってしまうのかと不安がある事だ。
何としてもナナシを自分に惚れさせなければいけないのに、
それが芳しくない事実にエルヴィンは溜息を零す。