過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第59章 兵士として、男として・・・
「ふ、ふ、不要だとっ!?貴様!私の娘に対し失礼にも程があるぞ!
良いか!私は王宮に出入りを許された商人――」
「だから何です?私には婚約者がいると申し上げたはずですが、
貴方こそ私の婚約者に対して失礼な物言いをされていることに
気づかないのですか?私の婚約者は己の危険を顧みず、
他の女性達を救う為人質として自ら犯人に捕らわれていきました。
貴方とこうして話している間に攫われた人質の命が
危険に曝されると、どうして思われないのですか?
貴方にはここで静かに人質が救出される事をお待ち頂きたい」
仄暗い光を宿したエルヴィンの双眼を見て
言葉を無くしたベッカーを振り返る事も無く、
エルヴィンは踵を返した。
会場の外に出ると、轍の形跡とミケの嗅覚を頼りに
エルヴィンは部下達を率いて襲撃犯の後を追った。