過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第59章 兵士として、男として・・・
出資者と談笑する振りをしながら周囲を観察している最中、
調査兵団の兵士がエルヴィンへメモを渡してきたので
それに目を通すと、案の定酒に一服盛られている上
襲撃者の存在を知ることになった。
瞬時に様々なシミュレーションを脳内に叩き出したエルヴィンは、
その兵士にリヴァイへの伝言を頼むと何事もなかったかのように
出資者へ向き直り会話へ戻った。
出資者達が酔っ払った赤い顔で「如何しました?」と
尋ねてきたので、エルヴィンが
「私の婚約者が慣れない場所で緊張してしまっていたようです」と
当り障りのない嘘を吐いて誤魔化すと聞きたくもない下卑た会話が
目の前で繰り広げられ、内心で舌を打つ。
「あぁ、あの婚約者殿ですか。綺麗な背中をなさっていましたな~」
「そうそう形の良い尻が何とも言えず・・・」
「自分は裾から覗く足にグッときましたぞ」
内心、ナナシをそんな邪な眼で見て良いのは俺だけだ!と
叫んでいたが、それをおくびにも出さず
「お褒めに預かり光栄です」と笑顔で返したエルヴィンは、
脳内で必死に「こんな豚共でも金蔓だ」と自分に言い聞かせる。
もういっそ「襲撃者が来たようです」と言ってやりたいが、
有効なカードを手に入れるチャンスでもあるのでグッと堪えた。
自分のすべき事はここである程度豚共を守って、
程よく解決に導く事だ。
襲撃者を抑え込む手筈はリヴァイ達に指示を出したし、
最悪賊を取り逃がしてもここの警備を任されていた
憲兵団の責任になるのでエルヴィンの知ったことではない。