過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
学習能力・・・
それはナナシよりもエルヴィンの方が遥かに高いだろう。
挨拶回りに飽きたナナシが料理を食べに行こうと隙を窺っていたのだが
・・・エルヴィンの手がナナシの腰をガッチリ掴んでいたので、
それも叶わなかった。
先程の件で捕まえておかないと面倒になると踏んだのだろう。
それは正しい判断だ。
正しい判断なのだが、香ばしい匂いがするのに
何も食べられない現実は自分にとって拷問以外の何者でもないので
素直にエルヴィンを褒められない。
腹筋に力を込めておかないと、お腹が鳴ってしまいそうだ。
というか、私のお腹が鳴ったら恥を掻くのはお主もなんだからな!と
こっそりエルヴィンを睨んでみるものの、
彼は貴族や商人との談笑に夢中で気づかない。
そんなに話をしていたければ一人でこの場に残っていろ、と
言いたくなる。
いっそ、腰に添えられている手首の関節を外してしまおうか・・・などと
物騒な事を考える程に、ナナシの腹の虫は気が立っていた。