過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
エルヴィンの姿を探して歩いていたリヴァイは前方で
ミケが壁の寄りかかって立っている事に気付き、
足早に近づく。
「ミケ、エルヴィンの野郎はいやがった・・・・か・・・・?」
ミケの顔を見た瞬間、リヴァイは固まった。
濡れたタオルで冷やしているようだが、誰かに殴られたように
頬が赤くなっており唇も少し切れているようで、
一体何があったのだろうかと眉間に皺を寄せる。
「その面はどうした?」
ミケに事情を聞こうとしたら、誰かが近づいてくる気配に気付き、
神経をそちらへ集中すると腹部を手で抑えたエルヴィンが
ヨロヨロと歩いてくるところだった。
額には脂汗を浮かべていて表情の硬いエルヴィンを
怪訝な顔で見ていると、彼はミケに吐き捨てるように言った。
「ミケェェ・・・・。少しは手加減しろ。
お陰で今日口に入れたものを全部吐く羽目になったぞ。
今日もまだ付き合いで何かを口にしなければならないのに、
それすら吐いてしまいそうだ」
地を這うような声で責めるエルヴィンに、
ミケは嗤うようにスンと鼻を鳴らす。
「自業自得だ。たまには痛い目に遭ったほうが良い・・・」
「何の話だ?」
エルヴィンとミケの会話にリヴァイが首を傾げていると、
更衣室からナナシが出てきたので一旦その話を打ち切る。
ナナシが出てきた途端、エルヴィンはキリッと姿勢を正して
ナナシへ歩み寄ると自然な動作で手を腰に回した。