過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第56章 悩ましい詰問
更衣室と思われる部屋に着くと、乱暴に手を離されたせいで
ナナシの足が縺れて室内にあったテーブルへ手を着いた。
危なかった、と思っていると覆い被さるように
エルヴィンが接近してきたので、ナナシの身体が硬直する。
自分を見下ろす双眼は恐ろしい程冷たい光を放っていて、
テーブルに手を着いて息が掛かるくらいの距離で覗き込まれた。
「・・・・怒っているのか?」
「そうだよ。俺は今とても怒っている」
一人称が『俺』になった時、エルヴィンは大抵怒っていたり
感情が高ぶっているのだ。
「酒を掛けられたのは事故だ。避けられなかった私も悪かったが、
そんなに怒る事ないだろう?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・それとも、迷惑を掛けた事を怒っているのか?
それなら謝罪する」
「・・・違う」
「では何に怒っておるのだ?」
「ナナシ・・・少し黙りなさい」
そう言うとエルヴィンはナナシの唇を奪い、背中へ手を回した。
口内に侵入した舌は乱暴なまでにその中を動き回り、
ナナシの身体がビクビクと震える。
呼吸が乱れてきた所で、エルヴィンが背中へ回した手を
徐々に下へずらし無遠慮に下着の中へと差し込んできたので、
ナナシは「ひっ!」と声を上げた。
驚きの余り、持っていた扇を落としてしまった程だ。