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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第8章 邂逅





「・・・ガスの消費率6%」



アンカーを打ち付けヒュンと風を切るように樹木の合間を高速移動しながら
ナナシは持っていた筆記用具でデータを書き記す。
ビンッとワイヤーが張り切った所で体勢を安定させ、
今までの自分の動きとガスの消費率などを事細かに書いた。



今ナナシは駐屯兵団にいる。


かと言って兵士になった訳ではなく短期のアルバイトとして
立体機動装置とガスの消費量のデータを取っているに過ぎないのだが、
どうやら雇い主はナナシを駐屯兵団に入れたいらしい。

雇い主であるドット・ピクシスとは25年来の付き合いで、
何かと便宜を図ってくれる協力者でもあった。

軍というものは嫌いだったが、その内情や傾向を知りたかったので
協力者と成り得る人材を探していたところ、
まだ若かりし頃のピクシスに出会った。

昔から変わり者だった彼は、すぐにナナシに興味を持ち
出来る範囲の協力を承諾してくれたのだ。

彼はナナシの素性を聞いてこない上詮索もしてこないが、
軍の情報も進んで与えようとはせず「知りたければ勝手に調べれば?」という体で
接してくるある意味ドライな間柄なのだ。


そんな間柄ではあるが、ナナシの身元引受人になったりと
色々な借りがあったので今はピクシスの依頼を受け
立体機動装置の動きの研究中である。

いつもの着物から兵団服に近い洋服に着替え、
この一ヶ月ワイヤーにぶら下がる毎日だ。


いい加減疲れてきた・・・。


駐屯兵団の兵士にはナナシの存在は公にされておらず、
ピクシスの側近二名のみがその存在を知っている。

今も駐屯兵がいない森の奥深い場所で作業を行っており、
そう簡単には見つからないだろう。

クルリと身を翻しガスを噴射させ身体を上昇させる。


「あの体勢からだとガスの消費が割りと多いな…」


枝に腰を下ろし、またデータを書き込む。
そろそろ側近のアンカが様子を見に来る頃合いか・・・
と思いながら、木にアンカーを打ち付け背中から地面へ落ちていった。



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