過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第53章 マジかっ!?
エルヴィンは自然な動作でナナシの腰に手を回し、
普段触れることにない肌にうっとりとした。
手袋をしているため直に触れられないこの状況が
恨めしいと思いながら、撫でるように手を動かすと
ナナシから手を叩かれた。
「おい、今度変な手付きしたら行かないからな」
「変な手付きとはどんな?」
「肌に触れるな」
「そんな素敵なドレスを着ておいて、
それが不可能な事くらいわかっているだろう?」
「・・・・・・・・・・」
口では絶対勝てない事がわかっているナナシは、
エルヴィンの眼前に持っていた扇を向ける。
紺色の扇の先端を見つめていると小さい穴のようなものが
開いている事に気づき、エルヴィンは反射的に身を屈めた。
パシュッ!という音と共に壁に穴が空き、一同は息を呑む。
「この扇は鉄扇でな。軽く銃も仕込んである。
万が一、恨まれているお主が会場で襲われても守ってやるから
安心しろ。だが、私を不愉快にさせた場合はその身体に
穴を開けるからな」
「・・・・・・・私を守ってくれるという気概は有り難いが、
その扇は置いていきなさい。危ないから・・・」
エルヴィンが青褪めた顔で鉄扇を取り上げようとしたが、
実力でナナシに勝てるはずもなく・・・・結局扇は奪えなかった。