過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第53章 マジかっ!?
――懇親会当日
タキシードに身を包んだエルヴィン・スミスは執務室内を
グルグルと無駄に歩いていた。
室内には同じくタキシードを着たリヴァイとミケ、
ドレスを纏ったハンジとナナバが居り、そわそわと
落ち着きのないエルヴィンを呆れた表情で見つめている。
「ねぇ、ちょっと落ち着きなよ。まるで出産を待っている
旦那みたいじゃない」
ナナバの言葉にエルヴィンは真顔で
「ナナシは私の子を産んでくれるだろうか?」と返したので、
「ダメだこりゃ」と肩を竦める。
今現在何をしているのかというと、ナナシの準備を
待っているだけなのだ。
それなのにエルヴィンは先程から落ち着かない様子で
室内を歩き回っている。
「遅いな・・・」
「しょうがないよ。あたしや女性兵士達の準備を
手伝ってくれていたからね」
リヴァイの言葉に絶世の美女になったハンジが笑いながら
答えていると扉をノックする音が聞こえ、
全員が扉へ視線を向けた。
「はいは~い。今開けるね」
ナナバが扉を開けたが、目の前にいる人物を見た瞬間
すぐに扉を閉めてしまった。
珍しいナナバの奇行に全員が「どうした?」と首を傾げる。
「・・・ごめん。色々と想像以上だったから混乱したよ」
ナナバが意を決したというような表情を作り、
扉の外にいる人物を招き入れると全員は息を呑んだ。