過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第52章 壁ドン!
モブリットは震えていた。
今現在、モブリットは眉目秀麗な調査兵団団長に
『壁ドン!』をされ、迫られていた。
もし自分が女性だったなら、このシチュエーションに
胸をときめかせていただろうが、生憎自分は男で
今は違う意味で胸がドキドキしている。
「モブリット・・・」
男でもゾクリと背筋が震える程、色気のある声に
モブリットの身体に緊張が走った。
何故自分が団長に追い詰められているのか・・・と考えた所で、
サーっと血の気が引く。
――きっと、ナナシさん関連だ!!
その結論に達した瞬間、また違う手がモブリットを追い詰めるように
『壁ドン!』をしてきた。
エルヴィンよりやや高めな位置からと、
低めの位置から二本の手が伸びてきて、
モブリットは心の中で悲鳴を上げる。
「モブリットよ・・・てめぇはクソメガネが好きじゃなかったのか?」
人類最強の兵士長の顔は常より険しく恐ろしい。
「まさか、おまえに持っていかれそうになるとはな・・・・」
スンと鼻を鳴らした分隊長に威嚇のつもりは無くても、
そのガタイの良さから充分な威力を発揮している。
計三人の男から『壁ドン!』をされたモブリットに逃げ道は無く、
何でこんな状況になってしまったのだろうかと己の不運を呪った。