過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第43章 ナナシの眷属
路地を暫く走っていると前方に先程の男が見え、
ハンジは「ねぇ、貴方」と声を掛けた。
ハンジの声に振り返ったツクモは微笑を浮かべていたが、
ハンジは本能的に「ヤバイ奴だ」と警戒する。
「何か御用ですか?お嬢さん」
「ナナシについて教えて貰いたんだ。
貴方達の家ってどこにあるの?ナナシは何者なの?」
「俺も聞きたいんやけど、あんた達のお仲間にナッちゃんに
ちょっかい出そうとかいう輩はおる?」
ツクモの質問にハンジの背中に冷たい汗が流れた。
さっきの『恋人候補』発言は恐らく冗談なんかじゃなく、
この男は本気でナナシに惚れているのだ。
あれは自分達やエルヴィンへの牽制だったのだろう。
ひょろっとして弱そうに見えても
底知れぬ恐ろしさを感じた。
「・・・まぁ、ええわ。おるんやろ?言い寄っている人間が。
昔からナッちゃんはやたらと男に好かれとったからなぁ」
独り言のように呟くツクモに、ハンジは再度質問する。