過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第6章 一触即発
―――翌日
「クレイグの爺さんはいるか?」
リヴァイとファーランは何の説明も無しに
仕事をキャンセルしてきた情報屋の店に来ていた。
情報屋の店はカモフラージュの為、ある程度の品物が売られていて
一見しては情報屋とはわからないところだった。
イザベルは例の『ダチ』に会うというので共には来ず、
日の当たる廃屋へと行ってしまった。
リヴァイもファーランもそれで良いと思っている。
同世代の友達がいた方がイザベルの為になるとわかっていたからだ。
「来ると思ったぞ、小僧共」
店の奥のカウンター付近の椅子に座り、
新聞を読んでいた老人が二人の姿を認識すると
不敵な笑みを浮かべた。
クレイグという人物は地下街でも古株で、
情報網は勿論顔も広く腕っ節も強いことで有名だった。
以前、「情報を寄越せ」と詰め寄ってきたゴロツキ数人を
相手にあっという間に叩きのめしたという伝説が
残っている程の猛者だ。
噂の真偽は定かではないが、少なくともリヴァイは
クレイグの事を警戒している。
「昨日の仕事依頼のキャンセルについて聞きたいんだけど…
納得のいく説明くらいしてくれんだろ?」
ファーランは威嚇するようにカウンターに肘を着けて、
クレイグを睨みつけた。
今日は念のため立体機動装置も装備しているので、
老人相手に遅れを取るような真似をするつもりはない。
ファーランの態度を見たクレイグは、
クッと喉奥で嗤い「理由は至極簡単じゃ」と語った。
「おまえさん達のような小僧よりも腕の立つ御仁に仕事を任せた。
・・・ただそれだけの事じゃよ」
「…爺さん、そりゃ俺達よりも腕の立つ奴がこの地下街にいるって事か?」
静かに殺気立ち胸倉を掴み詰め寄るファーランを一瞥したクレイグは、
それでも余裕を崩さない。
その様子にリヴァイは危機感を覚え、
悟られないように臨戦態勢になる。
「それに今回の仕事はリスクも高い。
確実にブツを手に入れるためにはお前さん達では不安でのぅ。
だから外させてもらったんじゃよ」
「……………っ」
「10秒以内にその手を離せ、小僧」