過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第37章 腕相撲
一人呆然としているナナシに
エルヴィンはにこやかな笑顔を向ける。
「どうしたんだい?ナナシ」
「お主は一体どこまで知っているのだ?」
「さて、何のことかな?」
あからさまに惚けているエルヴィンに
ナナシが苛立ちを募らせていると彼はスッと笑みを消した。
「『狼』が使用していた戦術、技を教えてくれるなら、
私も君に私が知っている情報を提供しよう」
情報交換を申し出てきたエルヴィンにナナシは眉を寄せる。
エルヴィンがどこまで『迅鬼狼』について知っているのか
知りたいところだが、それはリスクが大き過ぎる気がした。
もしかしたら、彼のハッタリかもしれない。
それなのにみすみすこちらの情報を与えてしまったら、
大変な事になってしまうだろう。
「・・・・・・・・・考えさせてくれ」
即答する事も出来ず、そう答えるしかなかった。
あまり先送りにすべきでもないが、
今は頭を冷やして考える必要があるだろう。
エルヴィンに背を向け部屋から出て行こうとすると、
彼から「君と語らう時間を楽しみにしているよ」と
自信に満ちた声を掛けられた。
ナナシは動揺しながら足早に執務室を後にするしかなかった。