過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第35章 薬
楽しそうなエルヴィンにミケはやれやれと肩を竦め、
それを聞いていたハンジが「でも負けちゃったらどうするの?」と
首を傾げた。
エルヴィンはハンジの質問に機嫌良く答える。
「ナナシが負けたら責任を取ってもらって、
一生私の傍に居てもらうだけだよ」
「・・・絶対勝つ!死に物狂いでな」
「そこまで拒絶されると流石の私も傷つくよ、ナナシ・・・」
エルヴィンの言葉を聞き流してナナシは脇腹を擦った。
その仕草を見てリヴァイは眉を寄せる。
「痩せ我慢はすんな。俺はおまえを殺す気で蹴ったんだ。
骨がイッてんだろ?」
確かに罅くらいは入っているかもしれないが、
人類最強の蹴りを受けてそれだけだったら上々だ。
「私は『化け物』だから、お主の蹴りでは死なん」
先程リヴァイがナナシを『化け物』と言った事を
引き合いに出してみると、リヴァイの顔がますます曇った。
彼はある意味わかりやすいと思う。
罪悪感があるのが目に見えてわかるのだ。
「何でも良い・・・兎に角冷やせ」
リヴァイはそう言うと、ナナシに冷やしたタオルを差し出した。