過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第31章 本来の目的
「血が・・・美味しかった」
トイレから戻ったエルヴィンを混じえ、
改めて何をしていたのかとハンジ達が問うと、
ナナシからはそんな回答が得られた。
ハンジ達はそれで、あぁ血を吸ってたのかと納得する。
「そんなに美味しかったんだ…?」
「あぁ・・・だが、エルヴィンは少々寝不足気味のようだ。
栄養も偏っていて健康とは言いがたい」
「え・・・?どうしたの、急に」
「あとは運動不足気味であると、血の味でわかった。
今日から少し健康状態を改めた方が良い」
ツッコミが追いつかない。
ハンジが眉尻を下げながら
「血を飲んだだけで、そういうのわかるの?」と尋ねると、
ナナシは当たり前だと言うように首肯した。
「便利過ぎるね・・・ナナシは。
いっそ調査兵団全員の血を飲んでもらった方が良いんじゃない?」
「それはダメだ、ハンジ」
ハンジの提案を即座に却下したエルヴィンは神妙な面持ちで言う。
「言っただろう?血を飲んでいる時のナナシは・・・
人目に晒すべきではない」
「うん・・・冗談だよ、エルヴィン」
はははっと乾いた声で笑うハンジに、
リヴァイとミケは「もう何も言うな」と視線を投げる。
場の空気が重くなり、食事を取る音だけが執務室に響いた。