過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第27章 真の変態は誰だ?
「それで構わねぇよ。だが、俺達はおまえを仲間だと思っている。
おまえが俺達をどう思おうが、
おまえが俺達の為に命を掛けた事実は変わらねぇからな。
それで充分だ」
ナナシが調査兵団の為に命を掛けて壁外まで来た事実は変わらない。
生半可な気持ちで単身巨人のいる壁外へ来れるはずないのだ。
口では「仲間ではない」と言っていても彼の行動が自分たちを
どう思っているか雄弁に語ってくれている。
それで充分だとリヴァイは思った。
「・・・そうか」
「そうだ。それに今でもイザベルはおまえのダチだろ?」
「え?」
目を丸くしているナナシにリヴァイが「違うのか?」と問うと、
自信無さそうに「イザベルがそう思ってくれているなら・・・」と言って俯いた。
人間らしい表情と仕草にリヴァイは違和感を覚える。
「・・・おまえ、少し変わったか?前より表情が出てるぞ」
リヴァイの指摘にナナシは首に手を当て「まぁな」と口籠ったが、
少しするとポツリと打ち明けた。
「軍隊生活を円滑に過ごす為に、少し表情が出るように細工したのだ。
対人関係を上手く切り抜けるには必須項目だからな」
「そんな事が出来るなら最初からそうしとけ」
こいつに常識は通じないと思っているリヴァイはツッコむ事をせず、
ナナシを促して歩き出した。