過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第27章 真の変態は誰だ?
エルヴィンに呼び出されたリヴァイは、
団長室にいると思っていたナナシの姿が無い事に
不機嫌そうに言葉を紡いだ。
「ナナシはどうした?」
「彼の準備が出来たから、
合同墓地まで彼を迎えに行ってやってくれないか。
それから手筈通り特別作戦班へ連れて行ってやって欲しい」
「あぁ?」
何で自分が迎えに行かねばならないのか、と
不平を表したが、エルヴィンは視線を上げないまま話し続けた。
「慰霊碑に・・・挨拶しておきたいと言って聞かなかった。
私も行こうかと尋ねたら『お主は彼女達に好かれていたのか?』と
言われてね。返す言葉も見つからずリヴァイを迎えにやると言ったら、
あっさり承諾されてしまったよ・・・・妬けてしまいそうだ」
サインを走らす手を止めないまま淡々と言ったエルヴィンの態度に、
リヴァイはナナシが誰に会いに行ったのか理解した。
イザベルとファーランがナナシと共に過ごした時間は限りなく短く、
彼がそこまで二人を気にする理由がよくわからなかったが、
リヴァイにとって大事な仲間をそうやって想われるのは
悪い気分ではない。
了解だ、と告げ退室しようとした所で、
エルヴィンが独り言のように零した。
「用意された部屋が綺麗だと君を褒めていたよ。
どうやら君には少し心を開いているようだ」
ナナシの部屋を隈無く掃除したのはリヴァイだった。
別に彼のためというよりは、
自分が汚れたままの部屋を許せなかったから
徹底的に掃除しただけなのだが・・・。
「ジャケットを脱がないように、君からも言っておいてくれ」
「どういう意味だ?」
「彼曰く・・・『自由の翼』は重いそうだ。着ていたくないと・・・」
コツコツと苛立たしげにペン先で机を叩くエルヴィンを見つめていると、
彼はやっと視線をリヴァイへ向けた。
「それでは困るんだよ。
半年以内に彼を籠絡して調査兵団に取り込む予定なのに、
そんな事で駄々を捏ねられては・・・ね」
怒気を含む双眼を見て
リヴァイはエルヴィンがかなり苛立っている事を改めて認識する。
態度に出るとは珍しいと思いながら、
何に怒っているのか推し量ろうと見つめ返した。